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本年も良い1年でありますように

2021年
新年を迎え、心だけは清めておこうと近くの神社へ初詣に向かう。

時節柄、行ったのは1月も中旬となった11日成人の日。
近所の神社といっても、普段の年であれば、こんな田舎のどこにこれだけの人がいたんだと
思うような人数が押し寄せる県内有数の由緒正しい神社である。

北国の早朝はしばれる。
目を10秒見開いていると、たぶん凍ってしまうだろう。
怖ろしいので試す勇気はない。

薄目を開けて目を最小限に細めて、寒さから時折、半白目になりつつ境内を進む。
知り合いに会っても気付かれないであろう、風貌となっていた。

清々しく厳かな雰囲気の中、お賽銭を投げ入れ、パンパンと手を鳴らす。
若いころは、欲の塊で、好き勝手なお願いごとばかりして、神様に無視され続けたが、
いつの間にか、お願いごとは「健康でいられますように」しか言わなくなった。

一通りお参りを済ませて、心が清らかになったところで、おみくじを引いてみる。
200円する財布の中に入れる、小さな金色の七福神の縁起物が入ったものに決め、
箱の一番底の方に手を突っ込み、底にへばりついている幸運のおみくじを一つ選ぶ。
私は、こういうところだけは慎重に行うタイプなのだ。安易には取らないのである。

「何が入っているかな?」と思いながら、ビニール袋を開けてみると、そこには

何も入っていなかった。

七福神はなく、紙だけしか入っていなかった。

「なんだよ、入れ忘れたのかよ。こんなことってあるのかよ?」
急に損をした気分になって、こっそり他のと取り替えたくなった。

しかし、周囲にはたくさんの人がおみくじコーナーに集まっている。
とてもじゃないけど、こっそりひき直すことなどできる雰囲気ではなかった。

仕方ないので、紙を開いて中見を読んでみると、そこには衝撃の事実が記されていた。

「恋みくじ」

私が買ったのは、七福神の縁起物おみくじにもかかわらずだ。
しかも、大凶じゃないか。
「これは、既に誰かに先を越されて、思い通りの内容がでなかった奴がひき直したに違いない。」

ひき直したのは許してやるとしても、ちゃんと元あった箱に戻すのがマナーだろがっ!
「おみくじをひき直すのにマナーも何もあるわけないだろ」って突っ込みが入りそうだが、
とにかくこうやって人に迷惑をかけることはやってはならないのだ。

仕方なく私は、おみくじを結ぶコーナーでその恋みくじを結んで帰ろうとしたその時だった。

「あの人、恋みくじだって…」
若いカップルの冷めた声が後ろから聞こえた。
最小ボリュームではあったが、かえって私にはこたえた。

こんな悲しい思いをしたのは何年ぶりだろうか。
怒りと悲しみと寂しさが入り交ざり、私は卒倒しそうになり、足早にその場を離れた。

「運がいいとか~♪悪いとか~♪人はときどき口にするけど~」とさだまさしさんの『無縁坂』を帰路、人知れず口ずさんでいた。
こうして、私の新しい1年は始まった。


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今年もお世話になりました。 心を落ち着けたいときのとって...