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【窯出しプリンがないなら、あきらめろよ!】

「当店では、マスクをされていない方の入店を原則としてお断りしています。」
最近どこのお店に行ってもこの張り紙が入り口付近に貼ってある。

「しまった。マスクをしないまま出てきてしまった。」
さぁ、こんなとき、あなたならどうする?

私は、ファミマの「窯出しプリン」を買いたいのだ。

時節柄、さすがにマスクなしのまま、澄ました顔で店内に入っていく勇気はさすがにない。
とりあえず、入り口のガラスをトントン叩いて、中のバイト店員さんの気を引く。

「なんだろ?」と店員さんが近づいてくる。
口の周りを四角く囲むジェスチャーをして、右手を左右に小刻みに振って、マスクがないから入店できないことをアピールする。
自動ドアを出てきた店員さんに、すかさず2000円を渡し、窯出しプリンを5個お願いする。

けげんな表情を見せるも、「しょうがねぇな」といった感じでデザートコーナーへ向かう。
ほどなくして戻ってくると、「申し訳ございません。窯出しプリンは売り切れです。」

「えっ?じゃ他のやつ。なんでもいいから、良さそうなプリンを5個お願いします。」
明らかに「めんどくせぇな」といった雰囲気を醸し出しながら、デザートコーナーに戻り、シュークリームを手に取り、遠目から合図を送ってきた。
「これですか?」

「違う違う」右手を大きくブンブン振ったあと、「チェンジ!チェンジ!」と手をひねってサインを送る。
スプーンで食べるゼスチャーの追加サインを送る。
「ス・プ・ーンで食べるやつ!」

店員さんはそれに応え、今度はコーヒーゼリーのような黒っぽい商品を手に取って、こちらにサインを送る。
「これどうですか?」
「違う!違う!」首と右手を左右に大きく振り、「プ・リ・ン、プ・リ・ン!」と読唇術を試みる。

店員さんが、次に手に取ったのは、ビッグサイズのプッチンプリン。
一瞬迷ったが、「ノー、ノー」とチェンジのサインを出す。
「これはおもしろくなってきたぞ。こうなったら負けるわけにはいかない。絶対勝利してやるぞ!」
そう心に決め、戦闘モードのスイッチが入ったそのときだった。

明らかに迷惑そうな表情で、店員さんがスゴスゴと近寄ってきた。
「お客様、すみません。これ以上は…」

「そうですか、窯だしプリン無いんじゃしょうがないですね。じゃ、アメリカンドック一つください」。
私はとっさに機転を利かせ、2番目にコンビニの好物を頼むことにした。
私はこういうところは、きちんと気を配れる男なのだ。

店を出て、トボトボ歩きながらアメリカンドックにマスタード付ケチャップをつけようとした時に事件は起きた。

「プチュッ!」といった乾いた音とともに、勢いよく中身が飛び出し、私の胸あたりに飛び散った。
それは、マスタードとケチャップの奇襲攻撃であった。
私の黒いスーツに白のワイシャツ、そしてブルーのネクタイ、そこに加えられた赤と黄のマスタード入りケチャップのコントラストがくっきりと際立っていた。

「おーっ!これはきっと店員さんの祟りに違いない!祟りじゃ~!」
私は、恐怖に声が震えた。

因果応報。
人に迷惑をかけると、必ず災いが起きるのだ。
「悪魔が来たりて笛を吹く。いや、悪魔が来たりてマスタードとケチャップを吹く!」

そう思った私は、慌てて店に駆け戻り、さっきのバイト店員さんにこう告げた。
「あなたは黒魔術の使い手なんですね?」

一瞬きょとんとした店員さんが、私の胸に拡がる赤と黄の美しいコントラストに目をやり「フフフッ」と不敵な笑みを浮かべた。

店員さん、悪ふざけが過ぎて「ごめんなさい」。


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