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心を落ち着けたいときのとっておきの方法

あなたは、急に墨汁のにおいを嗅ぎたくなることはないだろうか?

私にとって、あの荘厳かつ崇高な神々しい香りは、心を落ち着けたいときにはうってつけの
アイテムとなっている。
当然、100均で買ってきた墨汁を硯に注ぐだけでは神秘の世界を体現するのは不可能だ。

早朝、ピンと背筋を伸ばし、硯で墨をシュッシュッと磨るところから修業は始まる。
昔、銀座鳩居堂で買ったきり行方不明になってしまっていた硯と墨を探すのにすでに2時間が経っている。
そのことは気にならない。
独り黙々と墨を磨り始める。

私はこういうところは、きちんとしたこだわりを見せるタイプなのである。

なんて神々しい香りなんだろうか。
薄かった墨も、段々と濃くなり、いっそう墨を磨る手に力が入る。

磨り始めてどの位経っただろうか、
神々しい香りを堪能しているうちに、ふと墨汁の味はどのようなものか気になり始める。

香りだけよりも、飲んだみた方が一層神々しいのではないかと、邪心が脳裏をよぎる。
きっとそうに違いない。
そう思い始めると、私はもうどうにも止まらなくなるのだ。

「ちょっとだけなら」と口に含んでみる。
ウ゛ッ!これは結構きつい。
飲めなくはないが備長炭をかじった後に水を飲んだ感じだ。
呼吸のたびに墨汁のにおいが鼻の穴からスース―抜け出る。
やはり、墨汁は香りを楽しむもので、飲むものではなかったと反省する。

そうこうしているうちに、そろそろ皆の出勤時間が近づき、さっさと片づける。

まもなく、「おはようございます」とスタッフの一人が出勤してきた。

次の瞬間だった。

「なんですか、それ。」
「えッ?なんだよ。何か変?」
「口の周り黒くなってるじゃないですか。何やってんですか? ウワっ!墨汁の匂い臭ッ!  いったい何やってたんですか?」

しまった。
墨汁の味見をした後、口を拭いておくのを忘れていたのだ。

「くさいから窓開けますよ。」

「あっ、やめろ。落ち着け! 開けるな。すぐ締めろ!」

私の声もむなしく、窓は全開に開放され、
墨汁の崇高な香りは一瞬で外の冷気にかき消されてしまい、ジ・エンド。
全てが台無し。

しかも、そのあとすぐに自分が飲むコーヒーを淹れ始めたもんだから、
コーヒーのにおいが部屋中に充満したことで万事休す。

結局、心を落ち着かせるどころか、笑いものにされ、
その日一日ブルーな気分を引きずり、ストレスフルな一日となった。

誰にも理解されないかもしれないが、
やっぱり私はリラックスしたいときは、コーヒーの香りよりも墨汁の香り派。

皆さんは心を落ち着けたいとき、どんなことをしますか?


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本年も良い1年でありますように 【窯出しプリンがないなら、あ...